多細胞生物においては、個々の細胞は独立して存在しているのではなく、細胞同士が付着、あるいは細胞が細胞外マトリックスに付着している。細胞同士の結合、および細胞の細胞外マトリックスへの結合を細胞接着cell adhesionという。前者を細胞接着(さいぼうせっちゃく、細胞間接着 cell-to-cell adhesion)、後者を細胞-マトリックス接着 cell-matrix adhesionと呼んで、前者のみを狭義の細胞接着ということもある。
細胞接着の基本は、細胞同士あるいは細胞とマトリックスが直接接触して付着しているということであるが、細胞は接着のために細胞骨格を動員した細胞接着のための装置を持つこともある。細胞接着は、細胞接着分子の分子間相互作用によって担われ、接着装置も接着分子を中心に形成される。細胞接着の様相は、細胞や組織の種類によって多様である。上皮では、一般に上皮細胞同士が強い接着を行い、アドヘレンス・ジャンクション、タイトジャンクション、デスモソームといった特殊化した接着構造
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を形成する一方、細胞外マトリックスである基底膜に接着しヘミデスモソームを形成している。結合組織などの間質細胞は、細胞周辺の細胞外マトリックス(コラーゲン繊維など)に接着している。血液細胞のように、浮遊性でふだんは細胞接着しているようには見えない細胞でも、細胞分化や機能発現時には、ある種の組織への接着をする。免疫細胞では細胞の組織分配や機能発現に接着を介した細胞認識が重要である。神経細胞においては、神経細胞の移動、更に神経細胞から伸長した軸索誘導やシナプス形成の段階でも細胞接着を中心にした制御が不可欠である。
なお、培養皿の上で線維芽細胞などを培養すると、細胞はフィブロネクチンやヴィトロネクチンなどを介して皿上に伸展する。この現象は、細胞基質接着(cell-substratum adhesion)と呼ばれる細胞-マトリックス接着の一種である。この際、細胞の下部には、接着斑と呼ばれる構造ができる。